導入事例
F社キヤノンマーケティングジャパンが
2つのクラウドストレージサービスに「PrizmDoc」を採用
大手損害保険会社をはじめとした多くの企業にサービス提供
長年にわたり損害保険会社に向けてサービスを提供してきたキヤノンマーケティングジャパン。同社では、「損害調査業務向けストレージサービス(一件書類電子保管サービス)」の名称で文書管理システムを提供しているが、バージョンアップを計画している中で、さらなる顧客価値提供のために組み入れる製品を検討することになった。そこで同社は、ラネクシーの提供するファイルビューアーエンジン「PrizmDoc」を採用。新たなサービスは大手損害保険会社などで導入が決まっている。また、2022年12月に新たにサービスを開始した「DigitalWork Accelerator電子取引管理サービス」においても、ビューアーに「PrizmDoc」を採用。今後は広くサービスを拡充していく予定だ。
キヤノンマーケティングジャパン
- 導入前の課題
- ファイルのビューアーや各書類に対するアノテーション機能を有するサービスのさらなるバージョンアップを検討することになった。
キヤノンマーケティングジャパン
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PrizmDoc
- 導入後の効果
- ダウンロード/アップロードの必要がなく、作業をブラウザ上で完結できるアノテーション機能を評価し、PrizmDocを新たに採用。
バージョンアップ計画で新たに組み入れる製品として
アノテーション機能を実現する「PrizmDoc」に注目
グローバルキヤノングループの一員として、日本国内のマーケティング活動やソリューション提供を行うキヤノンマーケティングジャパン。同社は長年にわたって損害保険会社に向けたサービスに携わってきており、インターネット黎明期においては、ネットワーク経由で自動車修理工場から事故車の画像を送信してもらい、損害調査(査定)に活用するアジャスタカルテ、アジャカルネッツの仕組みを構築、提供してきた。MA事業部 デジタルビジネス推進本部 金融SS統括部 SS第二グループ 課長の高橋宏明氏は「当社には画像システムの提供から得た数多くの経験とノウハウがあります。これを活かすべく、損害保険会社の業務に特化した文書管理システムとして提供を開始したのが損害調査業務向けストレージサービス(一件書類電子保管サービス)です。当サービスはユーザビリティが高く、安心・安全なシステムであることが大きな特徴で、クラウドサービスとして提供されます」と説明する。
損害の査定から保険金の支払いに至るプロセスにおいては、非常に多くの書類が発生する。保険金の迅速な支払いは、顧客満足度の向上に不可欠なものだが、そのプロセスにおいて書類紛失や業務集中などの理由により遅延してしまうケースが少なくないという。
「一件書類電子保管サービスは、こうした問題を解決する手段の一つになります。案件に関係した一連の電子化書類を保管し、高速に検索・表示することで、査定業務の迅速化、品質向上、および災害対策も実現します」(高橋氏)
最近では、損保会社が送付された画像をスキャンして電子化するケースのほか、外部企業にスキャンを委託することもある。また、保険の契約者自身が直接撮影した画像を送付するケースも増えている。そこで同社では、外部連携の仕組みや保険の契約者向けの申請画面を用意するなど、単なる画像の保管庫ではなく、アプリケーションレイヤーまで踏み込んだ総合的なサービスを目指し、機能を拡張し続けてきた。そうした中、ファイルのビューアーや各書類に対するアノテーション機能のために組み込んでいた製品を置き換え、さらなる顧客価値を提供するために新たに組み入れる製品の検討を開始。その際のポイントとなったのが、アノテーション機能だ。
「電子化される以前は、ポストイットなどを使って書類にコメントや注釈を入れていました。現在は一部でAIが導入されるようになりましたが、今なお多くの人が目で確認して業務を行っています。そのため、査定機能が電子化されPC上で処理するようになっても、紙の書類と同様に使い勝手がよく、コメントを記入できる機能が不可欠です。これがアノテーション機能を必要とする理由であり、実現できるツールとして『PrizmDoc』に注目しました」(高橋氏)
ダウンロード/アップロード不要、
作業はブラウザ上で完結可能
サーバーごとの課金でコストメリットも大
キヤノンマーケティングジャパンでは、新たなビューアーおよびアノテーション機能の組み込みにあたり、PrizmDoc を含む4製品を比較・検討した。
「従来の機能を置き換える方法としては、PDFファイルを一度ダウンロードしAcrobatの機能を使う、Officeファイルであれば直接、編集してアップロードし直す…などの手段がありますが、年間にして何百万に及ぶ書類を、いちいちダウンロード/アップロードして処理する手間は、非常に大きな負荷になります。一方、PrizmDocのアノテーション機能を使えば、ダウンロード/アップロードする必要が無く、容易にコメントを付けたり、マークアップ(記号付け)したりすることができ、ブラウザ上で作業を完結可能です。これは他のソフトにはない機能ですので、非常に大きなメリットだと考えました」(高橋氏)
もう一点、高橋氏が評価するのがコストメリットだ。大手の損害保険会社は非常に多くの契約者を抱えているため、ユーザーも数百万人と膨大な数になる。
「PrizmDocはユーザー数ではなくサーバーに対しての課金となるため、コストメリットは大きいです。これは、ユーザー数が増えれば増えるほど、差も大きくなります」
さらに、製品の実績やベンダーへの信頼感もポイントとなった。PrizmDocは米国Accusoft社の製品だ。ラネクシーは同社の製品を日本市場にリリースしてから25年の歴史を持ち、かつ同社のパートナーの中で世界最大の売上を誇る。同社との強力なパートナーシップのもと、米国とは仕様の異なる日本市場のニーズに対応し、独自の販売方法、提供価格など柔軟な体制で支援してきた。
「ラネクシーは単なる商社ではなく、販売や技術のサポート体制が整備されており、確実で質の高いサポートが受けられると判断しました」と高橋氏は述べ、次のように続ける。
「実際、海外との取引において大きな障壁である言語の壁についても、ラネクシーはしっかり対応してくれています。また、文化の違いがある中で、時差を吸収してサポートいただいている点も助かっています。加えて、新潟に自社の開発拠点を持っており、製品を詳しく理解している技術チームの存在がとても心強く感じます」
ビューアーとしてのPrizmDocの活用を進める
UI/UXの改善など開発モジュールとして期待
今後についてキヤノンマーケティングジャパンは、PrizmDocのビューアーとしての活用を積極的に進めていく方針だ。この点について高橋氏は「例えば、画面の特定の位置にビューアーを組み込むことも容易なので、左右に2つのビューアーを並べて同時に閲覧することも可能です。1つの画面で関係する書類を一度に参照できれば、画面を開き直すなどの手間を省くことができます。こうしたユーザビリティを追求した画面設計に柔軟に対応でき、UI/UXに大きなメリットを提供できる開発モジュールとして、PrizmDocを位置付けています」と述べ、デジタルビジネス推進本部 金融SS統括部 S S第二グループの平井響氏も「ユーザー視点からいえば、UIがわかりやすく馴染みやすいので、Officeのように常日頃から慣れ親しんでいるソフトと同じような感覚で使用できます」と評価する。
一方、開発側の視点からは、ビューアーエンジンでありながら、メニューから使う機能をカスタマイズできる点が大きなメリットだという。
「設定画面において、お客様とやり取りしながら容易に機能を取捨選択できます。これも結果的に、優れたUI の実現につながっていると思います」(平井氏)
また今後は、調査業務の際に医療機関から提供される専用医療画像などのデータの取扱いについても効率化することを検討している。「今はDVDなどのメディアで提供してもらっていますが、そのままではシステムに読み込みできないため、メディアに残ったままになっています。これも将来的には、多くのファイル形式に対応できるPrizmDocのビューアーを組み込めるのではないかと考えています」(高橋氏)
そして同社によれば、損害調査のプロセスも変化していく可能性があるという。「一件書類電子保管サービスはすでに相応の売上がありますが、将来の変化を見据え、新しいビジネスの在り方を考えていくと、いち早く対応できるのがソフトウェアの部分です。今回はPrizmDocでしたが、ラネクシーでは海外製品を含め多くのソフトウェアを取り扱っているので、これらを私たちのソリューションに組み込むことでサービスのさらなる向上を図っていきたいと思います。その際にはぜひサポートを期待しています」(高橋氏)
優れたコスト面や実績を評価し
「DigitalWork Accelerator電子取引管理サービス」
にも採用
さてキヤノンマーケティングジャパンでは、2022年12月8日にリリースした「DigitalWork Accelerator(以下、DWA)電子取引管理サービス」においても、PrizmDocをビューアーに採用している。DWAは、企業における一連の取引業務で発生する取引関係書類を長期保管するクラウドサービスで、これを導入することで、企業は各部門で個別に管理していた注文書や請求書などの取引関係書類を一元管理でき、ワークフローにより承認プロセスを電子化することが可能になる。マーケティング統括部門 ソリューションデベロップメントセンターデジタルドキュメントサービス戦略推進課 課長代理の岡本眞太郎氏はこのサービスの特徴について「企業の業務プロセス変革と、経営資源である業務データの利活用を促進するサービスとして、まずは電子帳簿保存法、インボイス制度への対応を見据えてサービスをリリースしました。将来的には、企業の各業務における書類の保管箱として利用してもらうことを目指しています」と説明する。
DWAは、1階部分の共通システムにあたる「電子取引管理サービス」と、2階部分の「業種・業務別サービス」で構成されている。「電子取引管理サービス」では、電子帳簿保存法に対応した書類の長期保存をはじめ、書類の一元管理、承認ワークフロー、外部システム連携などの機能を提供している。「業種・業務別サービス」では、電子取引管理サービスと連携し、特定業務の効率化に特化したサービス、業種ごとの固有のプロセスに対応したサービスをそれぞれ提供する。リリース済のサービスとして、請求書の受け取りから支払い処理までの経理業務の事務負荷軽減を図る「請求書受取サービス」がある。そしてDWA電子取引管理サービスにおける書類のビューアーとして組み込まれたのがPrizmDocだ。
「PrizmDocを採用した理由としては、今後クラウドサービスとして多くのユーザーに利用いただくことを考えた際に、サーバーごとの課金である点を評価しました。さらに、当社の電子ファイリングシステム『Report Shelter』の画像処理機能の開発において、PrizmDocを提供するAccusoft社の画像処理ソフトウェア開発キット『Image Gear』を利用していたことから、開発のノウハウがあったことも決め手となりました」
また、すでに日本を代表する損害保険会社に採用されているという事実も大きな後押しとなった。加えて、一件書類電子保管サービスでの実績もあり、信頼性にも問題はないと考えられた。
「この案件にはDWAの開発メンバーが関与していたこともあり、強い推薦がありました。また、ImageGearよりアーキテクチャが新しいことも
魅力でした」(岡本氏)
なお、DWAは画像変換の処理の際にもPrizmDocを使用するが、オブジェクトがパッケージ化できるため、個々のインストールが不要で、作
業を効率化できる点も魅力とのことだ。
「PrizmDocの組み込みには手間が掛かりましたが、ラネクシーの手厚い技術サポートを受けて、無事開発を完了させることができました。用意された資料は、FAQなどのサイトを含めて基本英語で、難解な部分もありましたが、その面もラネクシーがカバーしてくれました」(岡本氏)
画像ファイル以外のビューアー表示も検討
業務アプリケーションや業種別サービスの拡充を目指す
現在DWAでは、PrizmDocをビューアーとしてのみ使用している。PDF、TIFF、JPEG、PNGファイルはビューアーで表示するが、それ以外のOfficeなどのファイルはダウンロードして確認してもらっている。ただし、今後ユーザーからの要望を元に、多数のファイル形式に対応できるPrizmDocのビューアー表示への対応、そしてさらには、現在DWAでは利用していないPrizmDocのアノテーション機能も活用し、業務における書類取扱い機能の拡充を検討するとしている。岡本氏は「DWAは今後もサービスの拡充を予定しており、2023年秋にはOCR機能も追加実装しました。今後も業務アプリケーションや製造・金融・流通など業種別サービスを拡充させ、2027年までに累計導入社数300社、売上高50億円を目標に掲げています」と展望を語ってくれた。